環境意識の高まりと、クルマの利用ニーズの多様化。これらを受けて、クルマや自転車のシェアリングサービスが活発化してきている。
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日本国内だけ見ても、この分野の老舗であるオリックス自動車の「プチレンタ」はもちろん、コインパーキング事業者大手のパーク24がマツダレンタカーと展開する「
rmt aion カーシェア24」や、中古車販売大手ガリバーインターナショナルの「カーシェアメイト」などが積極的に利用エリアを拡大。都心からスタートしたカーシェアリングサービス「careco」などもスタート。都内では、あちこちにカーシェアリングの利用ステーションを見かけるようになってきた。
カーシェアリングは新たなクルマ利用スタイルとして、どこま
アイオン rmt で広がっているのか。そして、カーシェアリングの周辺ビジネスはどこまで拡大するのか。今回の時事日想は特別編として、2010年の注目ビジネスである“カーシェアリング”にフォーカスしてみよう。
●相次ぐ利用エリア拡大。高まるカーシェアリングの使い勝手
カーシェアリングは複数のユーザー(会員)でクルマをシェアし、“必要な時だけクル
マを利用する”サービス。料金体系は「基本料+15?30分単位の時間課金」で、クルマの購入費はもちろん、駐車場代や保険料、ガソリン代などの維持費もいらない※。利用予約はPC向けのWebサイトや携帯サイトから行い、鍵は専用のICカードかおサイフケータイを使うため、クルマを使う度にレンタカーのような事務手続きをする必要はない。こうした特徴からカーシ
ェアリングは、通勤?通学など日常的な移動にクルマを必要とせず、駐車場代が高い都市部向けの新たな公共交通サービスとして広がってきている。
※カーシェアリングではガソリン代は利用料金に含まれている。レンタカーのようにユーザー負担で給油しなくてよい。
とりわけ2009年から2010年までは、カーシェアリング事業者各社の利用エリア
拡大が相次いだ。
例えば、最大手のオリックス自動車では自社での貸出ステーション開発のみならず、提携案件が増加。ファミリーマートや大阪府豊中市と提携するなど、利用エリア拡大が急ピッチで進んでいる。最近は、「マンションの敷地内駐車場が埋まらず、その一部を貸出ステーションにしたいという申し出も増えている」(オリックス自動車)と
いう。
また、プチレンタでは環境貢献への取り組みにも積極的に力を入れており、まだ一部の貸出ステーションのみではあるものの、三菱自動車の電気自動車(EV)「iMiEV」を導入。EVシェアリング事業にも意欲を見せている。
一方、貸出ステーションの展開で有利なポジションにあるのが、パーク24の「カーシェア24」だ。同社はコインパー
キングで最大のシェアを誇る「タイムズ駐車場」を手がけており、カーシェア24はこのタイムズ駐車場の一部を貸出ステーションとして利用することで、効果的なインフラ投資?利用エリアの拡大を行っている。2009年11月末時点の貸出ステーション数は全国136カ所、会員数は約3000人で256台の車両が運用されているという。
カーシェア24でユニークなのが
、カーシェアリング用の車種選定だ。カーシェアリングで使用するクルマは、燃費がよく維持費の安いコンパクトカーや軽自動車を用いるのが一般的。カーシェア24でも主力車種はマツダの「デミオ」だが、一部の貸出ステーションではBMWの3シリーズやアウディ A4、フィアット 500など輸入車も取りそろえている。これらのクルマも通常料金で借りられるため、「カ
ーシェアリングでも、おしゃれなクルマに乗りたい」という人にぴったりなのだ。
●カーシェアリングで、クルマ購入を促す!?
カーシェアリングというと、“クルマを買わないためのサービス”という見方が一般的だ。それに対して、カーシェアリング利用の促進がクルマ販売の“地ならし”になると見るのが、中古車販売大手のガリバーインターナショ
ナルや、ドイツ車メーカーであるアウディグループと住友不動産のカーシェアリング事業だ。
まず、ガリバーインターナショナルの「Gulliverカーシェアメイト」だが、このサービスでは同社が手がける中古車をシェアリング車両として用いて、住宅地や賃貸住宅に貸出ステーションを積極的に展開している。これは「(会員に)さまざまなクルマに乗っても
らうことで、まずはクルマに乗る機会を提供したい」(ガリバーインターナショナル)という考えからだ。特に重視しているのは、クルマ離れが進んでいる都市部の若者層で、2009年10月には単身者向け賃貸アパートを多く手がけるレオパレス21と提携した「レオガリバーカーシェアリング」を始めている。
「若者のクルマ離れが起きると、大きな影響を受
けるのが(若者が最初に買うことの多い)中古車販売なのです。我々にとって一番困るのは、若者がまったくクルマに乗らず、クルマから遠ざかってしまうこと。カーシェアリングの会員がすべて(中古車)販売に結びつくわけではありませんが、気軽にクルマに乗れる環境をカーシェアリングで用意し、その(会員の)中から将来『やっぱりクルマを購入したい』とい
うお客さまを作りたい。そして、クルマを買う時にはガリバーから買っていただきたいと考えているのです」(ガリバーインターナショナル)
こうした狙いもあり、先述のレオパレス向けの貸出ステーション展開のほかにも、「将来的には大学キャンパスなどに貸出ステーションを置き、スポーツカーなど若者にいろいろなクルマを楽しんでもらえる環境を
作りたい」という。
一方、富裕層向けのカーシェアリングでブランド訴求を行うのが、アウディ ジャパンとアウディ ファイナンシャル サービス、住友不動産が取り組む「アウディプレミアムカーシェアリング」だ。
こちらは東京都港区の泉ガーデンのレジデンスまたはオフィス入居者専用のサービスで、主なユーザーは外国人エグゼクティブ、
経営者層、医者、弁護士などの富裕層になっている。アウディは、本国ドイツではメルセデスベンツやBMWに比肩する高級ブランドだが、日本ではブランド構築の歴史がベンツやBMWより浅く、その訴求力はやや弱い。そこで富裕層がカーシェアリングで気軽に乗れる環境を用意することで、アウディの認知度向上とブランド訴求を行うのが狙いだ。
●カーシ
ェアリングの広がりは、IT業界としても注目
カーシェアリングの増加は、IT業界を中心に新たなビジネスやサービスの市場を作る効果もある。
まず、すでに動き出している市場として挙げられるのが、車載器と通信モジュール、動態管理用テレマティクスシステムなどだ。
カーシェアリングは、会員の認証や利用予約管理をサーバー側
で実施、クルマの管理はモバイル通信経由で行うことで、貸出ステーションの無人化を実現している。そのためカーシェアリング用のクルマには、GPSとモバイル通信モジュールを組み合わせた車載器が搭載されており、現在地や車両の状態、利用状況などがサーバーで把握?管理されている。カーシェアリングの実現には、この動態管理のためのテレマティクスシステ
ムが必須なのだ。
オリックス自動車やパーク24など、すでにカーシェアリング事業に参入している事業者は、動態管理システムを構築している。しかし、今後、カーシェアリング用の車両が増えれば、車載器と通信モジュールは台数が増えるごとに必要になる。
また最近のトレンドでは、ガソリンスタンドや中古車販売業者、自治体などが副業で
カーシェアリングサービスに乗り出すケースも増え始めている。例えば、昭和シェル石油は2009年12月からカーシェアリングサービス「まちのりくん」の実証実験を実施中だ。こうした事業者は車載器も含めた動態管理システムをアウトソーシングするケースが多く、これらはIT業界の新たなビジネス領域として注目されるだろう。
ほかにも、カーシェアリ
ングの一般普及が進めば、搭載カーナビに“個人のデータが保存できない”といった使い勝手の悪さも、ユーザーの不満として生じてくるだろう。通信型カーナビやナビ連携型のクラウドサービスにとっても、カーシェアリングは相性がいい。クルマ利用型サービスであるカーシェアリングは、さまざまな形でITの周辺ビジネスやサービスとの連携が考えられるのだ。
●2010年はカーシェアリング元年
日本におけるカーシェアリングは、まだ普及拡大期に入ったばかりであり、利用者数でみるとそれほど多くない。しかし、2009年後半から貸出ステーション数は急増しており、利用環境の整備が進んできている。とりわけマンション敷地内駐車場の有効活用や、コインパーキング活用による貸出ステーション増加は
、今年大きく進むだろう。これら貸出ステーション増加に伴い、各事業者の会員獲得キャンペーンも積極化。例えば、先述のカーシェア24では、2010年1月から3月末まで、会員の月額基本料を無料にする「月額無料キャンペーン」を実施している。
電車?地下鉄?バス網が発達している都市部を中心に、「クルマがなくても生活できる」「クルマはいらない」
という声をよく聞くようになった。しかし、時と場合によってはクルマがあった方が便利であり、都市部では「クルマの購入?維持費と、利用頻度が釣り合わない。コストパフォーマンスが悪い」というのが実際のところだろう。カーシェアリングは、こうしたクルマを取りまく環境やユーザーの意識の変化を受けて、今後さらに普及拡大するだろう。
2010年
は、カーシェアリングが新たな都市交通手段の1つとして定着していく年になりそうだ。【神尾寿】
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